軍事思想史入門 第15回【核戦略】(最終回)

【核戦略】 核兵器は人類に恐るべき破壊力をもたらしたが、その破壊力がもたらす悲劇性は広島や長崎への原爆投下からも非常によく知られている。核兵器というものが通常の兵器とは異なった論理で運用されるという「核戦略」の考えは、特にアメリカとソ連が大…

軍事思想史入門 第14回【対ゲリラ戦・対反乱作戦】

【対ゲリラ戦・対反乱作戦】 ゲリラ戦よりも対ゲリラ戦に関する書籍の歴史は古く、その先駆者であるスペインのサンタクルス・デ・マルセナードは『軍事的省察』の中で反乱とその対策について述べている。 しかしながら、この分野の発展は広大な海外植民地を…

軍事思想史入門 第13回【ゲリラ戦】

【ゲリラ戦】 少人数で奇襲や待ち伏せ、後方攪乱などの破壊活動を行うゲリラ戦は古代から用いられてきた戦法であり、ゲリラという言葉もナポレオン戦争時の半島戦争で生まれたスペイン語の「小さな戦争」の意味から登場したものである。 しかしながら、ゲリ…

軍事思想史入門 第12回【共産主義・ソ連の軍事思想】

【共産主義・ソ連の軍事思想】 この時期におけるソ連でも独自の軍事思想が発達していったが、その中には共産主義的思想の影響を受けたものもあることから、その部分も含めて把握しておく必要がある。 マルクスと並ぶ共産主義思想家であるドイツのエンゲルス…

軍事思想史入門 第11回【新たな軍事思想・地政学】

【新たな軍事思想・地政学】 この時期は従来では見られなかった新たな軍事思想の誕生期でもあった。 ドイツのデルブリュックは『政治史の枠組における戦争術の歴史』で、歴史学の方法論を活用しつつ、従来の戦史だけではなく社会史や政治史などと組み合わせ…

軍事思想史入門 第10回【戦車】

【戦車】 第一次世界大戦で登場した戦車は、当初こそ能力を十分に発揮できなかったものの、最終的には連合軍の勝利に大きく貢献し、戦争の新しい形態を予感させることとなった。 第一次世界大戦時に戦車の運用に携わっていたイギリスのフラーは、『大戦にお…

軍事思想史入門 第9回【第一次世界大戦後】

【第一次世界大戦後】 第一次世界大戦はそれまでに類を見ない大戦争であり、軍事のみならず政治、経済、文化に多大な影響を及ぼし、多くの技術や学問が戦争に用いられた革新的な戦争でもあった。それゆえに、第一次世界大戦は軍事思想の面でも大きな刺激を与…

軍事思想史入門 第8回【第一次世界大戦前夜】

【第一次世界大戦前夜】 ナポレオン戦争以後、用兵面ではジョミニの思想の影響が大きかったものの、火力の発達からジョミニ的な戦術の限界が見受けられるようになってきた。 そのような状態の中、ジョミニを筆頭とする旧来の原則にとらわれることなく、戦略…

軍事思想史入門 第7回【要塞戦】

【要塞戦】 古くから中近東や西洋では日干しレンガや石造りの城砦というものが利用されてきたが、火砲(大砲)の発達によって旧来の城砦は陳腐化し、より新しい形の築城方式が求められた。それが、いわゆるイタリア式築城(星形要塞)であり、これによって要…

軍事思想史入門 第6回【海軍】

【海軍】 ナポレオン戦争後においては、海軍思想もまた大いに花開いた時代となった。 海軍思想を説いた作品の中で最も有名なものと言えば、アメリカのマハンの著作『海上権力史論』である。これはジョミニの思想を海軍思想に応用したもので、特に艦隊決戦の…

軍事思想史入門 第5回【フランス革命後】

【フランス革命後】 フランス革命は世界史上で多大な影響を与えると共に、軍事においてもまた非常に大きな影響を与えたのは言うまでもない。軍事思想上で重要な著作はこのフランス革命以降の時期に執筆された物が多い まず、軍事思想上の地均しとなったのは…

軍事思想史入門 第4回【フランス革命前夜】

【フランス革命前夜】 七年戦争の勝利がプロイセンに栄光をもたらしたように、七年戦争で敗北を味わったフランスでは様々な新思想が登場することになる。それこそが、後のフランス革命後の諸戦争で新生フランス軍が各国を席巻する下地となっていたのはあまり…

軍事思想史入門 第3回【三十年戦争から七年戦争】

【三十年戦争から七年戦争】 三十年戦争はウェストファリア条約に基づく主権国家体制の成立だけでなく、軍事思想上においても多大な影響を与えた戦争となった。その背景として活版印刷術の登場により書籍の発行が容易になったことや、科学思想の広まりから軍…

軍事思想史入門 第2回【中世・ルネサンス】

【中世・ルネサンス】 ローマ帝国の衰退を背景とする西ヨーロッパの中世において、軍事思想もまた衰退の道を歩むこととなった。当時の西ヨーロッパでは古代ローマの軍制が失われただけでなく、優れた古典であるはずのウェゲティウスの『軍事論』も軍人よりも…

軍事思想史入門 第1回【古代】

【概説】 ここでは軍事思想の歴史について、特に代表的な人物とその著作、そしてその背景について簡単に説明していく。 (※著作については書籍、論文を問わず『二重鉤括弧』を使って表記する) 【古代】 まず初めに、古代における軍事思想の古典を東洋と西洋…

【参考文献】軍事学・戦略論系(随時更新)

(※全ての書籍を網羅するのは時間がかかるので、主要なものから随時更新していきます。それゆえに、掲載されていないものは所有していないというわけではありません) 防衛大学校・防衛学研究所(編)、『軍事学入門』、かや書房、1999 軍事学入門 かや…

【参考文献】兵站・補給・輸送・交通系(随時更新)

(※全ての書籍を網羅するのは時間がかかるので、主要なものから随時更新していきます。それゆえに、掲載されていないものは所有していないというわけではありません) マーチン・ファン・クレフェルト(著)、佐藤佐三郎(訳)、『補給戦』、中公文庫、20…

【参考文献】軍事史総合系(随時更新)

(※全ての書籍を網羅するのは時間がかかるので、主要なものから随時更新していきます。それゆえに、掲載されていないものは所有していないというわけではありません) マイケル・ハワード(著)、奥村房夫、奥村大作(共訳)、『ヨーロッパ史における戦争』…

緑林大学出版物一覧(随時更新)

緑林大学では軍事研究をする上で有用な国内外の文献の内、パブリックドメインとなったものを鋭意翻訳し、販売しています。この記事は最新の緑林大学の出版物の掲載を随時試みるものとなっています。 【広告宣伝】 (NEW) 32,【現代語訳】大戦間における…

おすすめの有名戦争映画10選【初心者向け】

戦争映画の中には作品全体のみならず、特定のシーンだけを切り抜いたものが有名になることもある。そういう意味でも戦争映画の楽しみ方には様々な形があり、意外なことがきっかけで名作が多くの人に知られるのも感慨深いものがある。そのような更なる名作の…

おすすめの傑作戦争映画10選【初心者向け】

確かに戦争文学は文章によって我々の心を揺さぶってくれるが、視覚や聴覚によってもたらされる衝撃も決して無視できない。戦争の風景を、音を、より身近に理解する為に戦争映画は大きな力を貸してくれる。そんな傑作と名高い戦争映画10選をここで紹介。 プ…

おすすめの有名戦争文学10選【初心者向け】

戦争文学の中には非常に人気が出た作品の中にも、史実とは異なった内容が書かれたものも存在する。もちろん楽しみ方は人それぞれだが、読む際に注意を必要とする場合も多い。そういう作品も含めた上で戦争文学のさらなる有名作をここで紹介。 司馬遼太郎『坂…

おすすめの古典的戦争文学10選【初心者向け】

不思議なことに、戦争文学の中でも古典や名作とされるものは反戦的な内容のものが多い。しかしそれは、稚拙で安直で幼稚な反戦論ではなく、戦争の過酷な現実に根差したリアルな反戦思想である。そのリアルさを知る為に最適な不朽の名作たちをここで紹介。 レ…

おすすめの有名軍事本10選【初心者向け】

古典と呼ばれる本以外にも、比較的新しく登場した作品の中で大きな影響を与える軍事本は数多く存在する。その中でも注目されることの多いものや良質なものをピックアップしてここで紹介。 クレフェルト『補給戦』 「兵站」や「補給」について語る上での必読…

おすすめの軍事古典10選【初心者向け】

経済学におけるアダム・スミスの『国富論』やジョン・メイナード・ケインズの『雇用・利子および貨幣の一般理論』のように、軍事学や軍事思想の中にも古典と呼ばれる作品がたくさん存在する。軍事の古典を全く知らない人に向けて、その中でも特に重要な意義…

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