おすすめの軍事古典10選【初心者向け】

 経済学におけるアダム・スミスの『国富論』やジョン・メイナード・ケインズの『雇用・利子および貨幣の一般理論』のように、軍事学や軍事思想の中にも古典と呼ばれる作品がたくさん存在する。軍事の古典を全く知らない人に向けて、その中でも特に重要な意義を持つ作品10選をここで紹介。

 

 

孫子『兵法』

 紀元前に執筆されながら、その意義はいまだ色褪せることのない東洋軍事思想の古典がこの孫子の『兵法』である。「敵を知り己を知れば百戦あやうからず」といった言葉に見覚えのある人も多いのではないか。

 

ウェゲティウス『軍事論』

 古代ローマの末期に執筆された西洋軍事思想の源泉がこのウェゲティウスの『軍事論』である。現在最もよく使われている拳銃の弾である9mmパラベラム弾の元ネタの「汝平和を欲さば、戦への備えをせよ(Si vis pacem, para bellum)」の元ネタがあるのがこの本。

 

ジョミニ『戦争概論』

 ナポレオン戦争の後、多くの軍人や軍事思想家に大きな影響を与えた「戦いの原則」について書かれたのがジョミニの『戦争概論』である。「戦力集中」の重要性についてこの作品が与えた影響は非常に大きい。

 

クラウゼヴィッツ戦争論

 軍事学を学ぶ上で要石(キーストーン)と呼べる最重要古典がこのクラウゼヴィッツの『軍事論』である。「戦争は政治の延長(継続)である」という考えをはじめ、「摩擦」「重心」「戦争の三位一体」など多くのキーワードを生み出し、後世の軍事研究に多大な影響を与えた。

 

マハン『海上権力史論』

 海軍思想の権威であり、ジョミニの考えを海軍に適用したのがマハンの『海上権力史論』である。「艦隊決戦」の重視や、「海上権力(シーパワー)」概念の登場など、海軍に関する軍事思想に与えた影響は大きい。

 

コーベット『海洋戦略の諸原則』

 マハンの思想を批判し、クラウゼヴィッツ的な考えを取り入れた、もう一つの海軍思想の古典がコーベットの『海洋戦略の諸原則』である。艦隊決戦よりも海上コミュニケーション網の保護を重要視した考えは当時の海軍大国イギリスの政策にも影響を与えた。

 

マッキンダー『デモクラシーの理想と現実』

 地政学の二大流派の内、英米地政学を代表する古典がこのマッキンダーの『デモクラシーの理想と現実』である。「ランドパワー」、「ハートランド」や「世界島」などの独特の概念の提唱や、東欧地域の重要性を語ったことで有名である。

 

ドゥーエ『制空』

 航空戦略や独立空軍の重要性を論じ、戦争における「空」の重要性を大々的に論じたのがこのドゥーエの『制空』である。現在では受け入れがたい観念ではあるが、戦略爆撃による戦争の早期終結論は当時の各国の航空戦略に多大な影響を与えた。

 

スヴェーチン『戦略』

 英米独仏などとは異なった独特の軍事思想を発展させていった当時のソ連軍事学界で、「作戦術」概念を提唱したのがスヴェーチンの『戦略』である。時代と地域を超えてアメリカや日本でも話題になった「作戦術」だが、その意味合いは大きく変化していることに注意が必要である。

 

毛沢東『遊撃戦論』

 共産主義的な立場から、農村地域におけるゲリラ戦とその発展について述べたのが毛沢東の『遊撃戦論』である。ここで唱えられた人民戦争理論はキューバベトナムなど世界各地の革命や反乱に多大な影響を与えた。

 

 以上、おすすめの軍事古典10選でした。