軍事思想史入門 第6回【海軍】

【海軍】

 ナポレオン戦争後においては、海軍思想もまた大いに花開いた時代となった。

 海軍思想を説いた作品の中で最も有名なものと言えば、アメリカのマハンの著作海上権力史論』である。これはジョミニの思想を海軍思想に応用したもので、特に艦隊決戦の重要性を大いに主張したことで名高い。また、マハンの唱えた「シーパワー(海上権力)」という概念は、後の地政学に大きな影響を与えたことも功績として挙げられる。

 その一方で、イギリスのコーベット『海洋戦略の諸原則』クラウゼヴィッツ的な視点を取り入れつつ、マハンの考えに批判を行った。彼は歴史上では海戦だけでは決定的な戦勝を得られなかった事例を挙げつつ、海軍万能論に傾きがちだったマハンの考えに対し、陸軍や外交との協力の重要性を主張した。また、マハンが重要視する艦隊決戦よりも海上コミュニケーション網の確保を重んじる考えなどは、第一次世界大戦イギリス海軍の方針にも影響を与えたという。

 また、フランスでは従来の海軍思想で常識とされた戦艦のような大型艦と艦載砲を重んじる考えに対し、快速の小型艦艇と水雷兵器の組み合わせを重視する青年学派(新生学派)と呼ばれる考えが勃興した。特にその考えを代表するものがフランスのオーブによる『海洋戦争とフランスの軍港』である。また、フランスのダリウスはその著書『海戦史論』で主に海軍の歴史を研究しつつ青年学派の考えを批判した。

 

マハン『海上権力史論』

コーベット『海洋戦略の諸原則』

オーブ『海洋戦争とフランスの軍港』

ダリウス『海戦史論』

 

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