おすすめの古典的戦争文学10選【初心者向け】

 不思議なことに、戦争文学の中でも古典や名作とされるものは反戦的な内容のものが多い。しかしそれは、稚拙で安直で幼稚な反戦論ではなく、戦争の過酷な現実に根差したリアルな反戦思想である。そのリアルさを知る為に最適な不朽の名作たちをここで紹介。

 

レマルク西部戦線異状なし

 海外の反戦文学の代表作の一つ。第一次世界大戦西部戦線に生きる志願兵パウル塹壕戦での日々を描いた作品で、何度も映像化(映画化、テレビドラマ化)がされていることからも、その影響力がうかがえるだろう。ただし、訳文が古いので読みづらさを感じる部分もあり、新訳が待たれる作品でもある。

 

トランボ『ジョニーは戦場へ行った』

 海外の反戦文学の代表作の一つ。第一次世界大戦から帰還したジョニーは、視覚、聴覚、嗅覚、発声能力、そして両腕と両脚を失い、頭と胴体だけの「意識を持つだけの生きた肉塊」として病院の中で生きながらえていた。その内容から絶版と復刊を繰り返した、時代に翻弄されながらも生きながらえる名作である。

 

オーウェルカタロニア讃歌

 スペイン内戦で理想に燃えて人民戦線側の軍人となったジョージ・オーウェルが、敵であるはずのファシストフランコ軍よりも、味方であるはずのソ連の援助を受けたスターリン主義者からの手ひどい扱いに衝撃を受けたことから執筆された作品。後の著作『動物農場』や『1984年』にも影響を与えたとされる。

 

ベル『汽車は遅れなかった』

 ノーベル文学賞作家であるハインリヒ・ベルによる第二次世界大戦のドイツ兵の物語。いつか訪れる必然的な死を予感しながら、休暇を終えて前線へと向かう汽車に乗り込む主人公のアンドレアス。そこでは兵士同士の友情があり、娼婦のオリナとの出会いがあり、希望があり、そして……。

 

フランクル『夜と霧』

 第二次世界大戦中にナチス強制収容所に捕らわれたユダヤ人の心理学者であるフランクルが、強制収容所での過酷な生活を記録すると共に、そこでの人々は何に絶望し、何に希望を持ったのかという「生きがい」についての本でもある。

 

大岡昇平『野火』

 太平洋戦争末期のフィリピンを舞台に、肺病によって部隊を追われ、野戦病院に拒絶され、アメリカ軍もフィリピン人も敵である過酷な状態の中、飢えと絶望の中で狂気に捕らわれていくという物語。二度の映画化もされており、極限の状況下における兵士の姿を描いた名作である。

 

竹山道雄ビルマの竪琴

 太平洋戦争末期から終戦後のビルマミャンマー)が舞台、ビルマの竪琴の演奏に長けた水島上等兵はイギリス軍への降伏後、いまだ抵抗を続ける日本軍部隊を説得する為に竪琴と共に旅立ち、行方不明となる。その後、戦友たちの前に水島によく似た竪琴を持つ僧侶が現れて……。これも二度の映画化がされた名作である。

 

阿川弘之『雲の墓標』

 太平洋戦争末期、海軍予備学生として京都帝国大学から海軍へと入った主人公の吉野たちは特攻隊員としての訓練を積みながら日々を過ごしていく。雲を墓標として、海と空の果てに散っていった若者たちの日常と苦悩を描いた名作である。

 

吉田満戦艦大和ノ最期』

 太平洋戦争末期、沖縄防衛の為に出撃することになった戦艦大和を舞台に、大量の米軍機の猛攻の前に屈して沈む大和、そしてそれと共に没し、あるいは生きようともがく海軍将兵たちの姿を描いた、戦後初期の戦記文学の傑作である。

 

日本戦没学生記念会『きけわだつみのこえ』

 太平洋戦争で没した多くの学徒兵たちの遺書が掲載された遺稿集。その中では学業を断念して戦場へと赴くことになった若き青年たちの苦悩や恐怖、未来への希望や、日本の将来への考察などが描かれており、戦後の日本社会において大きな反響を呼ぶことになった。

 

 以上、おすすめの古典的戦争文学10選でした。