軍事思想史入門 第10回【戦車】

【戦車】

 第一次世界大戦で登場した戦車は、当初こそ能力を十分に発揮できなかったものの、最終的には連合軍の勝利に大きく貢献し、戦争の新しい形態を予感させることとなった。

 第一次世界大戦時に戦車の運用に携わっていたイギリスのフラーは、『大戦における戦車』など早い段階から戦車に関する著作を執筆し、特に将来戦では小規模な職業軍から構成される戦車部隊が中心になると主張した。これはリデル・ハートの間接的アプローチの考えに近いが、フラーが戦車の役割を最前線で活動する主導的なものとし、歩兵は後方での補助的任務を行うに過ぎないとしたのに対し、リデル・ハートは歩兵は戦車を支援するものとしてその役割をフラーほど軽視しなかった。

 また、オーストリアアイマンスベルガー『戦闘車両の戦争』の中で、第一次世界大戦における戦車戦を分析しながら戦車運用研究に取り組んだ。

 そして、戦車の運用について最も有名な人物と言えばドイツのグデーリアンであり、その著作『戦車に注目せよ!』は後のいわゆる「電撃戦」のルーツとなった思想が盛り込まれている。戦車を中核としつつもそれに自動車化された歩兵や砲兵を組み合わせ、それらは爆撃機による支援を受け、戦いにおいては機動や奇襲を重視するような大規模な装甲部隊の必要性を大々的に主張した。そして、グデーリアンは後の第二次世界大戦ポーランド戦やフランス戦での活躍もあり、理論と実践の双方で戦車運用の一大人物として見なされるようになったのである。

 また、ソ連においても独自の「縦深作戦理論」につながる軍事思想が発展しつつあり、ソ連トリアンダフィーロフ『現代軍の作戦の性質』の中で具体的な数字を挙げながら縦深会戦の方法について論じている。また、同じくソ連トゥハチェフスキー『国境作戦の性質』などの多数の著作を通じて、「連続作戦理論」から発展させた「縦深作戦理論」を構築していった。

(※ちなみにフラーは『制限戦争指導論』グデーリアン電撃戦 グデーリアン回想録』の方が有名である)

 

フラー『大戦における戦車』『制限戦争指導論』

アイマンスベルガー『戦闘車両の戦争』

グデーリアン『戦車に注目せよ!』『電撃戦 グデーリアン回想録』

トリアンダフィーロフ『現代軍の作戦の性質』

トゥハチェフスキー『国境作戦の性質』

 

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