【フランス革命前夜】
七年戦争の勝利がプロイセンに栄光をもたらしたように、七年戦争で敗北を味わったフランスでは様々な新思想が登場することになる。それこそが、後のフランス革命後の諸戦争で新生フランス軍が各国を席巻する下地となっていたのはあまり知られていない。
その最も代表的な著作と言われているのが、フランスのギベールによる『戦術一般論』である。この著作の中では国民軍の創設など、後のフランス軍だけでなく近代的軍隊に影響を与えたような先進的な考えも含まれていたが、革命前の保守的なフランス軍内で受け入れられることはなかった。
そのようなギベールの批判者の中でも、軍事思想上で重要な役割を果たした人物がいる。それはフランスのマイゼロアであり、彼の後期の著作である『戦争理論』が果たした役割は非常に大きい。マイゼロアは古代ギリシャ・ローマや中世のビザンツ帝国の研究を進めながら、先に登場したマウリキウスの『ストラテギコン』やレオーン六世の『タクティカ』の翻訳を行った。そして、ストラテギコンの名からストラテジー、つまり「戦略」という概念を生み出し、それを一般化させたという功績を残したのである。
それ以外にもフランスではデュ・テイユの『野戦における新しい砲兵用法』や、ブールセの『山地戦の原則』などといった優れた軍事書籍が登場し、フランス革命後のフランス軍やナポレオンの天才的用兵術を支えることになったのである。また、イギリスのロイドも『軍事的回想』において、当時では漠然とした概念であった作戦線を自身の理論の中に取り入れ、後の軍事思想に影響を与えることになった。
ギベール『戦術一般論』
マイゼロア『戦争理論』
デュ・テイユ『野戦における新しい砲兵用法』
ブールセ『山地戦の原則』
ロイド『軍事的回想』